地方へ馴染む特急券。消防団の実態について




異常気象がもはや普通のことで、異常が異常ではないような世の中です。
地震や水害、豪雪など自然災害による被害のニュースを目にすることも珍しくないと思います。

そのニュースでちらちらと映りこんでいる制服を着た青年たちの正体は、実は消防署や自衛隊のひとたちだけではありません。
そのなかのうちの何人かは、普段は会社員や自営業者として別の仕事をしているけれども、火災や水害の際には制服を着て出動する「消防団」の団員かもしれません。

普通に生活していては意外と馴染みのない「消防団」について、その組織や立場、普段の様子などを解説します。
※ 自治体により、実態や組織構成などは異なると思いますので、一部、僕の体験に基づいたものとなります。

消防団とは?消防署とはなにが違うの?




法律的位置づけ

消防団は、火災や水害などの災害に対応する消防署とならぶ、消防組織法で定められたれっきとした消防組織です。
消防署との違いは、消防署は常勤として日々、防災や救急に対応するための活動をしているのに対して、消防団は通常は消防のための活動に従事せず、日ごろは普通の会社員や自営業者として働いているということです。

立場としては、災害時に出動する特別職の公務員。つまり、非常勤の特別公務員となります。
災害時に消防団として活動している際は、公務員としての地位にありますから、その活動の際に負傷した場合には、公務員災害補償制度の対象になります。

組織構成

地域によって異なるとは思いますが、僕の所属する消防団は
「消防団 > 方面隊 > 分団 > 消防部」
という階層があり、所属は最下層の部になります。

部は定員が10名で、原則は、それ以上でもそれ以下でもいけません。
定員10名の部が各地域に点在するため、市町村の消防団の総員は数百名になるところが多いです。(もちろん、市町村の人口によって変わります)

報酬はあるの?

報酬はあります。
市町村の条例によってことなりますが、一回の出動につき数千円というところが多いと思います。時給制ではないので、何時間出動しようが一回の出動として報酬が支払われます。

ちなみに「出動」は必ずしも実際の災害時に限らず、定期的に行われる大規模な訓練や演習、または防災啓発の広報活動(要するにビラ配り)なども「出動」として報酬の支払い対象です。

その辺の活動が数千円なのはいいのですが、個人的には、実際の災害時などで命をかけて出動しても数千円というのは、どうなんだろうと思っています。

団員について

普段はなにをしているの?

消防団に所属していないひとと同様に普通に働いています。会社員でも自営業でも、職業に制限はありません。
僕なんかは働いていないのに消防団やってるので、自宅警備員かつ地域警備員みたいなものです。

勤務中に災害が起こったらどうするのか? と思われるかと思いますが、基本的には代休や有休を使って出動することになります。本業を犠牲にしてまでも地域の安全に貢献するわけです。

ただ、地域に根差した企業などにおいては、消防団の活動に一定の理解があり、災害時の勤務中抜けなどを許している場合もあります。

また、災害時以外にも消防団として、土曜日や日曜日に演習や訓練などが実施されます。
回数はそれほど多くなく年に数回ですが、消防部の幹部となると年間で10日近くは訓練や会議どに出席しなければなりません。

僕も2年ほど幹部をやっていましたが、勤務先がブラックだったので、もともと少ない休日が消防団で潰れて死にそうになっていました。

年収200万円台で月100時間ほどの時間外労働を10年以上つづけてきた僕が、ブラック企業の内情と、ブラック企業なのかどうかを見極める方法を解説します。 ※ 個人的な体験に基づいた方法なので一般化できるかどうかは分かりません。。

あと、日常的には消火栓の点検や積載車(放水のためのポンプやホースを積んだ赤い車)の点検と地域のパトロールなどをしています。

どんなひとが所属している?

それこそ色々なひとが所属していますが、共通しているのは地域に根差した生活をしていることです。

まずはやはり、その地域で生まれ育ったひとが所属しています。このような人たちはただそこに住んでいるというわけではなく、こういった面倒くさい地域の集まり(といったら失礼ですが)にも参加する人たちなので、いずれ地域のつながりの中核となることが多いです。

そして、意外にもその地域とは縁もゆかりもなかったひとも結構います。
縁もゆかりもない土地から移住してきたからこそ、地域に馴染もうという意気込みで消防団に参加したのではないかと思います。

僕自身も若いころに都内に出て随分と地元から離れていたのですが、消防団に所属することでかなり地域に馴染むことができました。
また、別のひとは消防団で広げた人脈を本業の営業に活用しています。

所属団員の人柄については、正直、かつては消防団は柄の悪い粗暴なひとが多いというイメージがありましたが、そんなことは全然ありませんでした。

たしかに、僕の所属する団のほとんどの団員は、アスリートみたいな肉体をしてるし、金髪ピアスも髭面も当たり前。入れ墨も3人いますが、どの団員も家庭を持ち、ちゃんと働いている真っ当な大人です。(むしろ、働いていなくて家庭もない僕が一番ろくでもない。。。)

どうやって入団するの?

基本的にはいつでも団員募集中ですが、応募があったことなんて一度もありません。
団員の知り合いや友人などを勧誘して入団してもらうことがほとんどです。
僕も友人の熱心な勧誘に負けて入団しました。

正直、ただ働くだけで精一杯なのにさらに消防団なんて面倒くさくて自分になんの得もないことなんて誰もやりたくないと思いますので、だいたいは人手不足で困っています。
もし、入団したいなんて声があれば喜んで迎え入れてくれることでしょう。

年齢が心配という人も大丈夫です。
今は若年人口が減少しているということもあり、若手も減っていて30代でも消防団では若い方なんてこともざらです。

で、実際大変なの? 悪い噂も聞くけど

なにかと面倒ではありますが、大変ではないです。

はじめは分からないことばかりですし、かったりぃーなんて思っていたのですが、普通は触ることのできない放水ポンプの操作をできるようになったり、ちょっとした軍隊みたいな規律だったりも、不思議とだんだん面白くなってきます。

悪い噂については、僕も入団前に色々調べましたが

  • 飲み会が強制参加
  • しかもその飲み会が荒れる
  • 報酬が勝手に天引きされる
  • 訓練がめちゃくちゃ厳しい

あたりがよく言われることです。

これはもう所属する部による、としか言えないのですが、少なくとも僕の所属した部では飲み会はほとんどないですし、あっても普通に欠席できます。
飲み会が荒れるかというと、全然荒れていません。先輩の団員たちはそれが寂しいらしいですが、まぁ世代の違いですね。

報酬は、うちはちゃんと払っています。だけどみんなそれぞれ家計とは別にして、消防団で集まったときにパッと使ったり、消防団関係で必要になる備品をちょこっと買ったりしています。

訓練は厳しくありません。ゆるゆるやってます。
ただ、いざ火災になったときに使い物にならない消防団では意味がないので、やるときはやってます。

消防団は地域に馴染む特急券

とまぁ、色々書いてきましたが、地域や部の特性によって違うことも多々あると思います。
でも確実に言えることは、消防団に入ると一気に地域に馴染むことができます。

その前に消防団に馴染めなかったらどうするの? という心配はあると思いますが、馴染めずにフェイドアウトした団員もたしかにいました。
でも別にそれで村八分なんてこともないので、過度に心配する必要もないのではと思います。

というわけでみなさん、特に地域に早く馴染みたいひとや仕事で人脈が欲しいひとなど、消防団へ入団するのはどうでしょうか。
少なくとも、ポンプの操法やロープワーク、土嚢積みの技術が身に付きますよ。




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