文章を採点してもらえる機会というのは意外と少ないものです。
いくら自分では文章作成が得意だと思っていても本当にそうなのかは分かりません。
その文章は、読む人のことを考えていない独りよがりの言葉の羅列になっていませんか。
ここでは、僕自身が日々勉強中でもある読みやすい文章の「基本」についてまとめてみます。
最低限おさえておきたい5つのポイント
ひらがなと漢字のバランス
ひらがなと漢字はその文章の狙いを考えてバランスよく使いましょう。
難読漢字を多用することは論外ですが、普通の漢字であっても使用頻度が高すぎると難解なイメージがして読み手は圧倒されてしまいます。
かといって、ひらがなが多すぎても読みにくくなってしまいますのでバランスが大事です。
ちょうどいいと感じるバランスは個人の感覚に由来するので、定量的に説明することが難しいのですが、個人的には「文章が固いな」と思ったら名詞を減らします。
たとえば「難読漢字を多用することは」を「難しい漢字をたくさん使うのは」に変えます。
ただ、webライティングなどでみられるような必要以上にひらがなを多用している文章は読みやすさをそこなううえに、人によってはバカにされているように感じるので、僕はできるだけ漢字を使うようにしています。
あきらかにこどもに向けた文章ならばともかく、むだにひらがなばかりたくさん使った文章はぎゃくによみにくいとは思いませんか。
句読点の位置と頻度
句読点はできるだけ少なく打った方が読みやすくなります。
一般的には息継ぎが必要なところ、または意味の区切りに句読点を打つことが正しいとされていますし、僕も基本的にはそのようにしています。
ただ、僕は読みやすさという点を重視して、必ずしもそのルールに沿って句読点を打っていません。
息継ぎを基準にした句読点では、頭の中で文字を音声として理解している人にとっては自然でストレスのない読み方ができると思うのですが、それだけだと視覚情報を無視した句読点になってしまいます。
なので僕はさらに一定の基準をもって句読点を打っています。
それは漢字と記号は半分句読点として扱う、ということと、同じひらがな文字が続く時には句読点を打つ、ということです。
漢字と記号は明らかにひらがなと違うものだと視覚的に区別できるものですので、文章を読むうえで引っかかりができます。そのひっかかりを以て句読点としての軽い息継ぎとみなすという考え方です。
たとえば
「漢字と記号は明らかにひらがなと違うもの」
「漢字と記号はあきらかにひらがなとちがうもの」
「漢字と記号ははっきりとひらがなと違うもの」
「漢字と記号は、はっきりとひらがなと違うもの」
を比べると違いが分かるのではないでしょうか。
接続詞
接続詞は、そもそも使うかどうかが難しいところです。
本当に良い文章は接続詞がなくても意味がすんなり頭に入ってくるものだと僕は思っています。
しかし、厳密に、理解できるだけではなく誤解できない契約書のような文章を作るときには、接続詞は間違いなく正確に使わなけばなりません。
逆に、むやみやたらと接続詞を多用することで、文章は驚くほど意味を成さなくなるので注意です。
あなたが、あえて読みにくい文章を作りたいと思ったとします。
逆に、それならば接続詞を多用してみることをお勧めします。
しかし、文章のつながりがおかしくなることでしょう。
したがって、狙いどおり読み手の頭をかき乱すことができ、すなわち悪文ができます。
語尾
同じ語尾が繰り返し続くと、リズムが悪くなるので表現を変えるようにしましょう。
無理矢理に語尾を変えていくのも不自然ですが「ます」を「ましょう」に「です」を「ます」に変えるだけでも随分と読みやすくなります。
体言止めで文章を終わらせるという方法もありますが、あまりにも体言止めを多用すると狙いすぎているように見えますので要注意。これ本当に重要。
表記の揺らぎ
人と「ひと」所と「ところ」など、漢字とひらがなのどちらの表現も自然である場合には、その文章内では、できるだけどちらかの表現に統一したほうが読みやすくなります。
僕の場合には他の部分で漢字の使用が多くなりがちなので、なるべくひらがなで表記するようにしていますが「人」は漢字のほうが自然な気がするので漢字で表記しています。感覚です。
その他のコツ
論絶は構成がしっかりしていますので、接続詞を正確に使うことが重要。
レビューは勢いとリズムが大切なので、体言止めを多用。
日記や体験談は時間の流れが明白なので、接続詞を削る。
文学的文章は解釈の余地を残す表現をする(メタファー、提喩、換喩)
参考文献
読みやすい文章を作ることに特化した書籍というわけではないのですが、文章読本として僕は下記の書籍がためになったので紹介しておきます。
- 「日本語表記ルールブック」日本エディタースクール 編
- 「よくわかるメタファー 表現技法のしくみ」瀬戸賢一 著
- 「小説の技巧」ディヴィッド・ロッジ 著
- 「分かりやすい公用文の書きかた」磯崎陽輔 著
- 「理科系の作文技術」木下是雄 著
- 「いい文章には型がある」吉岡友治 著
最後に、文章作成の訓練に他人の文章を書き写すというものがありますが、僕はあまりお勧めしません。確実に文章力は向上するとは思いますが、時間がかかりすぎます。
repeat after meの英語教育を受けてきた人ならば、真似をするだけでそれが修得できるようにならないのは身に染みているはずです。
それよりは、駄文も含めて、ひたすらにたくさんの文章を読んでなにかしらを書いたほうが知識もつきますし、遙かに有益だと思います。
以上、読みにくい文章で失礼しました。
僕も修行中ですが、参考になれば幸いです。