本の選び方が分からない。良い本を選ぶコツと注意点




本は食事のようなものです。
本で得た知識と感動は、精神を形づくる大事な栄養になります。

一方で、食べ過ぎればお腹を壊すように、知識の過食や偏食は歪んだ価値観のもとになりますから、たくさんの知識を吸収しつつも健全なこころを保つには、バランスよく良質な本を読むことが不可欠です。

でも良質な本ってどうやって選べばいいんだろう?

そんなかたのために、本を選ぶときのちょっとしたコツを紹介します。




なんのために読むのか

そもそも、なにを目的として本を読むのかによって選ぶべき本は変わってきます。
ここを誤ると、とんでもない悪書につかまってしまうので注意が必要です。

娯楽のために読むのであれば選書は自由です。
気の向くまま心の惹かれるままに選べば良いと思います。

知識を得るために読む場合には、慎重に選ばなければならないです。
どれほど詳細な知識を得られても、それが間違った知識では意味がないからです。

悩みを解決するための場合には、さらに警戒が必要です。
最悪の場合、悩みを解消するために手に取った本が、あらたな悩みの種になりかねません。

以下で、本を読む目的別にみていきます。

娯楽のための読書

娯楽として読むのであれば、選書はなんでもいいと思います。
そこから何かを得ようという心構えもないので、書いてある内容から妙な影響を受けてしまうことも少ないからです。

ちなみに、世の中には活字をついつい読んでしまう人がいて、そういう人は国語辞典や旧訳聖書なんてものまでうっかり読破してしまいます。

知識を得るための読書

知識を得るために本を選ぶ際には、僕は以下の点に気を付けています。

  • タイトル
  • 著者
  • デザイン
  • 版数

タイトル

まず避けるのは「なぜ~~なのか」というフレーズを使ったタイトルの本です。

仮に「なぜ、モテる人は耳から毛が生えているのか」というタイトルの本があったとします。
僕がどうしてこの本を手に取らないかというと「耳から毛が生えている人がモテる」という根拠もなにもないことを、さも事実であるかのように謳ってその理由を説明しようとしているからです。

これが「耳から毛が生えている人はモテるのか? 」というタイトルだったらまだ興味がそそられますが、これから説明して納得してもらおうということを、「なぜ?」と先に事実として押し付けてくる本は信用ができません。

「なぜ『なぜ~~というタイトルの本は売れるのか』というタイトルの本が売れるのか」というタイトルの本があったら、うっかり買ってしまうかもしれませんが。

著者

著者の経歴を見て、本の内容がポジショントークになっていないかを事前にチェックします。

これを確認しないで読み進めると、すごく良いことが書いてあるなと感心した挙句に、あとがきで著者がその分野でのスポークスマンのような立場だったことが判明して、長い長いCMを見せられたような気になってがっかりします。

とはいえ、このような極端にメリットばかり強調する内容の本も読み方によっては有用です。
それは、真っ向から対立するポジションにある著者が書いた本と比較することです。
「肉を食べると健康になる」と「健康でいたいならば肉を絶て」などといったタイトルの本を読み比べると、面白いのではないかと思います。

デザイン

デザインに凝っているかどうかも選書の際に確認します。

活字ばかりが詰まっていて装飾のない本は読みにくいと思う人は多いのではないでしょうか。
たしかにそのとおりで、多少のデザインはすごく助かるのですが、僕は過剰なデザインが施された本は信用しないようにしています。

重要なポイントは大きな字で、理解を促すためにシンプルな図解を各所に挿入。
どれも親切な工夫なのですが、中にはスカスカな中身をごまかすために字を大きくして説得力を高めているだけのものもあります。(いまです)
また、シンプルな図解も「分かった気にさせる」だけで重要なポイントが省かれていたりもします。

このようなことから、僕は過剰なデザインと感じる本には手を出さないようにしています。

ところで、頭のいい人は難しいものをシンプルに説明できると言いますが、僕もそう思っていて、そのような技術を持っている人は本当にすごいなと感心します。
でも、その技術は複雑な物事をあえて抽象化してシンプルにすることで、物事を分析したり、あらたなアイデアを追加したりするということが本質ではないかと思っているので、ただ物事を単純化して説明して終わらせるというのはなにか違うような気がしています。

あなたの抱えてる複雑な悩みを、勝手に「それはつまり、こういうことですね」なんて簡単にまとめられたら腹が立ちませんか?
複雑なものは、どうしたって本質的にも複雑なままなのです。

版数

これは単純に版数が多ければ多いほど良いとは言い切れないのですが、やはり長く読み継がれていて重版を繰り返している本には良書が多いように思います。

また、版を繰り返すことによって内容も充実していく傾向がありますので、知識を目的とした読書では版数の確認は重要です。
これは良書だと読んでいたのに、はるかむかしに刷られた初版だったのでは、そこに書かれている知識も陳腐化しているかもしれません。
最新の情報が得られる本を選びましょう。

悩みを解決するための読書

悩みがあるのだけれど相談できる相手もいないし、参考になる本でも探してみようという考えは素晴らしいのですが、注意が必要です。

人の悩みは尽きないもので、書店に行くと悩みを解決するための本がたくさん並んでいます。
たとえば人間関係の悩みに関する本であれば「見た目を気にすれば万事OK」だったり「結局は人は内面でしか勝負できない」だったり、中には「人間関係は宇宙が決めている」というものもあります。

正直、どれが正しいとかは分かりませんが、そんなときはどうしても自分が聞きたい言葉に合致する本を選んでしまいがちです。

出会いがないという恋愛の悩みを持っているのに、容姿に自信がないからといって「コミュニケーション力を磨けば運命の人と結ばれる」とかいう本を読んでもたぶん意味はありません。
とりあえず走りにいって身体を絞った方がよほど効果があるのではないでしょうか。

この例でいえば、出会わなければコミュニケーションを取ることもできませんし、そもそも鍛錬を積まなければ出会えないのであれば運命ですらありません。
この場合には、悩みを解決するために本に救いを求めていることは間違いではないと思うのですが、悩みを解消することが目的になっています。

これでは、一時的に悩みを忘れることはできるでしょうが、根本的にはなにも解決しません。
問題は時間をかければかけるほど利子が乗ってきます。

悩みを抱えて書店に行くときは「悩みを解決したいのか、あるいは解消したいのか」を忘れないようにしましょう。

そうだ。書店に行こう

色々な選書のコツを紹介しました。
でも、結局なにを読んだらいいのか、かえって分からなくなってしまったかもしれません。

そんなときは、とりあえず書店に行きましょう。
選書のコツ? そんなものは忘れて書架のあいだを歩いていると、一冊の本の背表紙が目に留まるはずです。それです。
それがもしかしたら運命の一冊かもしれません。
あるいは、どうしようもない駄作かもしれません。
それは読んでみなければ分かりません。

読後、どんな気持ちになるのか分からない。
それもまた読書の楽しみです。

それでは、良い読書を。




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